発達障害の一つである自閉症は、自閉スペクトラム症とも呼ばれ、先天的な原因によって対人関係やコミュニケーションに障害が見られる障害です。症状だけが明らかな状態から生活に支障が出るほどの状態など、自閉症と一口にいってもその状況は様々です。また子供の20人から50人に1人が自閉症であるというデータもあります。周囲の理解が必要となる自閉症には、どういった症状が見られるのか、またその治療法や対処法について詳しくご紹介します。

自閉症は病気ではなくその人自身の特性

自閉症は発達障害の一つで、人とのコミュニケーションや対人関係に障害が生じるといった症状が見られます。ただ、その症状も強く出る場合とそれほど強くなく「こういった性格なのでは」と受け止められることもあります。そのため、自閉症は病気ではなく自身が持って生まれた、もともと「特有の性質」と考えられています。先天的なものですが、病気ではなく、その性質にあわせた教育や支援をすることが必要です。ただ、自閉症の子供の中には興奮やパニック、攻撃性があるといった子もいるため、そういった場合には治療として薬物療法が行われることもあります。自閉症の特性は周囲の理解が得られないことも多く、そのため体や精神の症状がひどくなり、引きこもりや自傷行為といった問題を引き起こすことも少なくありません。そういった問題に発展することのないよう、自閉症についての理解と対応が求められます。

自閉症の2つの特徴

自閉症は主に以下の2つの特徴が見られます。

対人との交流やコミュニケーションの質に異常が見られる

人と人との交流は、相手の反応を見て言葉を考えたり、積極的に関わったりすることを成長過程で学んでいくことがほとんどです。ですが自閉症の子供は一人でいることが好きで、積極的に関わることが少なかったり、逆に一方的な交流をしてきたりします。その原因として話し言葉の遅れや言語が理解できない、たとえ話が分からないといった言葉のコミュニケーションの障害や、目の動きや身振りといったコミュニケーションが理解できないことが挙げられます。

強いこだわりや行動パターンが見られる

自閉症の子供は、強いこだわりが多く見られます。興味のあることに対し、知識を豊富だったり、特定の物事に強い興味を持ち、それだけにこだわったりするといったことがあります。また特定の手順へのこだわり、同じ動作を繰り返すといったことも見られます。逆に興味のないことには全く手を付けないといったこともあります。ただし成長に伴い、こだわりが趣味に変化することもありますし、こだわりの対象が別のものに変わることもあります。

自閉症で問題となるのは二次的な問題への発展

自閉症の子供に見られるコミュニケーションの障害やこだわりは、その子の個性でもあるためそこまで問題ではありません。その障害やこだわりが生活に影響を与えているのであれば支援の対象となりますが、そうではない場合は「個性」として受け入れられるためです。自閉症で深刻な問題となるのは、自閉症の特性により本人が周囲から受けるストレスやトラウマといった二次的な障害です。自閉症の特性が理解できない周囲から、からかいを受けたり、勉強についていけないことで自信を喪失するなどして頭痛や腹痛を繰り返したり、不安などからうつの状態になったりします。そのことから暴言や暴力に発展したり、引きこもりや自傷行為を繰り返すようになったりすることもあります。そうなるとますます周囲の理解を得られず、ストレスが増えるといったことにもなりかねません。そういった二次的な問題を引き起こさないようにすることが必要です。

自閉症はその特性にあわせた生活環境を整えることが必須

自閉症は病気ではありません。そのため、治療というよりも自閉症という特性を理解し、そのことで生じるストレスを軽減する環境を整えることが最優先となります。自閉症についての理解をすることはもちろんですが、それぞれの個性にあわせた対処が必要となりますので、自閉症の症状が見られる場合には、早めに専門の医療機関で診察、診断してもらうことが大切です。