日常生活において、「不安」「こだわり」が強いために様々な支障が出ている病気のことを強迫症、もしくは強迫性障害といいます。特定のことにこだわったり、不安を感じたりすることは誰にでもあることですが、自分でもそんなことはないと分かっていても行為が止められず、止めようとすると不安になるのは深刻な状態です。そこで強迫症とは一体どんな病気なのか、その症状と共に治療について詳しくご紹介します。

強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る強迫性障害

不安やこだわりが強いだけでなく、それが度を過ぎてしまうと感じているなら、強迫症(強迫性障害)による影響が考えられます。強迫性障害には以下の2つの特徴があります。

強迫観念

不安やこだわりが強い強迫観念に思考が支配されてしまいます。「他人が触ったものに触れない」「手の臭いや汚れが落ちていない気がする」「戸締まりが気になって何度も家に戻ってしまう」「ラッキーナンバーにこだわる」といった考え方から強迫行為を繰り返します。周りだけでなく自身もそういった考えは度が過ぎていると感じていても、その考えから逃れられないでいます。また突然その考えに囚われたり、何かをしているときに強迫観念が割り込んできたりします。

強迫行為

強迫観念に基づく行為のことで、「汚れに対する不安」だと過剰な手洗いをする、戸締まりや火事が気になって何度も家に戻って確かめる、また家族などに確認を強要したりします。車の運転中に人をひいたかもしれないと車を降りて確かめたりすることもあります。服の着る順番にこだわり、順番を間違えると最初からやり直す、いらないものでもまた必要になるかもと考えてしまい家の中にものをため込む行為なども強迫行為の一つです。

強迫症が起きるのは脳内の障害や神経細胞の異常によるもの

強迫性障害の原因には、脳内の特定部位に何らかの障害が発生している可能性と、セロトニンの機能異常が考えられています。セロトニンは神経細胞の伝達に関わっている神経伝達物質のことです。強迫性障害は、このセロトニンの働きに問題が起きていることで、汚れや安全に関する情報が伝わらない状態であるともいえます。

強迫症だと自覚していない人が多い

強迫症でその行為を異常に感じていても、「自分がおかしいのではないか」と考えてしまい、治療を受けることなく長く一人で苦しむ人は多くいます。強迫症(強迫性障害)は病気であり、治療をすれば改善する見込みがあります。強迫症をそのまま放置していると、生活に支障が出るだけでなくうつ病など他の精神障害を併発し悪化してしまう可能性もあります。家族がそういった状態になっているのであれば、早期に専門医の診察を受ける必要があります。

強迫症(強迫性障害)の治療

強迫症の治療には、以下の2つの治療を組み合わせることで効果が期待できるとされています。強迫症の治療は患者本人がどうしたいかによって治療方針が決められますので、自分で「治したい」という気持ちを強く持つことが必要となります。

認知行動療法

強迫行為を引き起こす強迫観念による不安に向き合い、行為をしないよう我慢をするという行動を課題として繰り返す「曝露(ばくろ)反応妨害法」が行われます。不安が減っていくことで、強迫行為も減っていきます。

薬物療法

強迫症状や不安感、また抑うつなどを治療するための薬物療法が行われます。抗うつ薬のSSRIが用いられます。薬物療法で心の状態が安定してから認知行動療法を行います。他の抗うつ剤よりは副作用が少ない薬ですが、徐々に量を増やす必要があるため、体調がおかしい場合などは早めに相談する必要があります。