発達障害の一つで、子供に多いとされるADHDですが、成長したあとにもその症状が続いている人、また大人になってからADHDであることが分かるといった人も増えてきています。成人のうち3~4%の人にADHDの症状が見られるというデータもあります。大人になってからADHDになることはなく、子供の頃に症状が現れるため早期の発見や対応が必要とされています。そこでADHDとはどんな障害なのか、また治療について詳しくご紹介します。

ADHDはその症状が生活や学業に影響を与えている状態のこと

ADHDは、正式には「注意欠如・多動症」もしくは「注意欠如・多動性障害」という発達障害の一つです。集中力がない、じっとできない、思いついて行動してしまうといった症状の現れ方により大きく分けて3つの障害が区分されています。

不注意

集中することのできない「不注意」の特徴が強いタイプです。忘れ物やなくし物をすることが多く、じっとしていられない、整理整頓ができない、細かいことができないといった行動が見られます。また自分が好きなことや興味があることに集中してしまうと、話しかけられても気がつかないことが多く、「聞いていない」「無視した」と責められることがあります。

多動・衝動

不注意の特徴があまりなく、多動や衝動といった行動が多いタイプです。じっとしていることができない、授業中に席を立って歩き回る、突然走り出す、順番を抜かす、友達のしていることをさえぎったり、話を最後まで聞かずに答えたりするといった行動が見られます。

不注意・多動・衝動

ADHDの特徴である3つの行動が一度に見られるタイプです。

ADHDの原因は育て方やしつけではなく様々な原因が考えられる

落ち着きがない、勝手に歩き回るといった行動が目立つため、長くADHDは病気ではなく親の育て方やしつけに問題があるとされ、適切な診察や治療がされないままでした。ただ、研究が進み、大人になってADHDの症状によって悩まされる人がいること、ADHDは大人になってから発症するものではないといったことが明らかになっています。またADHDは脳の機能異常といった原因のほかに、以下のような可能性も指摘されています。

脳の機能発達異常・神経伝達物質の偏り

ADHDの原因として、神経伝達物質の一つであるドーパミンなどの分泌に偏りがあることが考えられています。その偏りには脳の機能の発達に関係があるとされ、研究が進められています。

脳のネットワークに障害が生じている

脳は外部の刺激に対応し、様々な指令を出しています。ADHDは、この指令を伝えるネットワークに障害が発生し、過剰な対応をしたり反応ができなくなったりすることが考えられています。通常は刺激の有無に関わらず、脳機能によって抑えられている反応の切り替えが上手くできていない状態がADHDではないかという説もあります。

遺伝や環境が影響を及ぼしている可能性も考えられている

ADHDには遺伝が関係しているのではないかという説がありますが、はっきりとした要因が見つかっていません。ただ、親にADHDの傾向があるほか、兄弟にもADHDや発達障害があるといったケースもあります。さらに環境因子の可能性も指摘されています。妊娠や出産時の感染症や合併症、また子供の育った環境における経済状況、また虐待の有無なども関係があるのではないかという説もあります。ただしADHDの原因は一つだけではなく、いくつもの要因が組み合わさって発症するため、遺伝だけが原因とはいえません。

ADHDの治療

ADHDは治療をしても完全にその症状がなくなるわけではありません。そのため本人はもちろん、周りの家族や関わる人たちがADHDについて理解し、対応していくことが必要です。そのため、ADHDは薬物療法と共に心理社会的治療の2つをあわせて治療が進められます。薬物療法によって、自分を大切にし、自己評価を高める手助けをし、その上で自分自身の行動を自分でコントロールできるよう、関係者がADHDを理解しその行動に対応していく環境を整えていき、時間をかけて治療していくことが望まれます。