人前で話すのが苦手で、多くの人の前に出ただけで顔が赤くなったり汗が出たりする、という経験がある人は多いのではないでしょうか。対人恐怖症と呼ばれたり、性格の問題とされたりすることも多かったのですが、現代では「社交不安障害」もしくは「社交不安症」と呼ばれ、病気であることが分かっています。10人に1人か2人はかかるともいわれていて、原因ははっきりとは分からないものの、治療が可能な病気です。ただ、治療をしないままでいるとうつ病や依存症といった心の病気を引き起こすことにもなるため、早期の受診と治療が必要とされています。そこで知っておきたい社交不安障害の症状や考えられる原因、治療方法について詳しくご紹介します。

社交不安障害は症状によって社会生活に支障が出ている状態をさしていうもの

人前に出ると顔が赤くなる、緊張して声が小さくなる、震えるといったことは、多くの人が経験することです。通常であれば経験を積んだり事前に心を落ち着かせたりと対策をすれば慣れて改善します。ただ、社交不安障害の人は、不安や緊張から様々な症状に悩まされることに加え、症状が出るのではないかという不安から、人前に出られなくなり、学校や会社に行けなくなるなど社会生活が営めない状態になってしまいます。以前は対人恐怖症や赤面恐怖症、視線恐怖症などと呼ばれていましたが、現代では総括して社交不安障害と呼ばれています。

社交不安障害で起きる様々な症状

社交不安障害の症状には、特定のシーンでその状況が耐えられなくなることに加え、身体的な症状が出ます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

社交不安障害の患者が苦手とする状況

人前に出て何かをすることが社交不安障害の患者には最も苦手なシーンの一つです。発表会やプレゼンというシチュエーションを回避するようになります。また人との雑談や、人前で食事をすることができない人もいます。そのほか、美容院に行くこと、合コンの参加ができないこともあります。全く知らない人であれば対応できるのに、関係性(会社の同僚、顔見知りなど)のある相手だと対応できなかったりもします。

社交不安障害で起きる身体的な症状

動悸がひどくなり、息苦しさを感じる、めまいや吐き気がする、腹痛や下痢に悩まされることもあります。汗をかいたり赤面したりする、ほてりやのぼせが起きることもあります。苦手とする状況におかれると身体的な症状が出るため、その症状が出ないよう引きこもるといった行動に出ることが多くあるのが社交不安障害です。

社交不安障害は治療が可能な病気

社交不安障害が認知されていなかった頃には、これらは「性格の問題」「気の持ちよう」といわれることも少なくありませんでした。ですが、はっきりとした原因は分かっていないものの、神経伝達物質のセロトニンの分泌に何らかの問題が発生することで神経が過敏になり、不安になるということが考えられており、治療すれば症状が改善することが分かっています。そのため、以下の2つの治療方法が社交不安障害に対し行われています。

薬物療法

抗不安薬を用いた薬物療法が一般的ですが、セロトニンが関係していることが明らかになったことから、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を使用した治療も行われています。薬物療法はすぐに効果が出ますが、継続した投薬ともう一つの治療法である認知・行動療法もあわせて行うのがよいと考えられています。

認知・行動療法

不安を取り除くために、不安に感じる行動パターンを変える、不安に対処する方法などを医師や臨床心理士と共に考えながら不安にとらわれないよう慣れていけるように訓練する治療法です。