死に直面するような体験などをした後、その記憶が何度も思い出されることで当時に戻ってしまったような感覚をずっと繰り返し抱いてしまう病気が心的外傷後ストレス障害、略してPTSDです。本人が自覚していなかったり、何年も後になってから思い出して苦しんだりといったことも多く見られます。何度も繰り返し同じ現実に苦しめられてしまうこの状態を解決するためにはどうすればいいのか、知っておきたいことを詳しくご紹介します。

心的外傷後ストレス障害は極端なストレスによって発症する

対応能力を超えるような強烈な体験、また非日常な体験がきっかけとなり、引き起こされるのが心的外傷後ストレス障害です。略してPTSDとも呼ばれます。命を脅かされるような災害や事故、犯罪、戦争、近親者によるDVや虐待、性犯罪など自身で経験したことだけでなく、目撃するなど間接的な立場やそういった経験をした人が近親者や家族におり、その経験を知ったことがきっかけとなることもあります。また同じような経験をしたにもかかわらず、PTSDになる人もいれば、症状が出ない人もいます。またPTSDとなるような経験を繰り返したことでPTSDになる人や、PTSDのきっかけが似たような別の出来事がきっかけとなる人など様々です。PTSDのきっかけとなった体験を繰り返し思い出すことが、自身の精神的な負担となって慢性化してしまい、解決の糸口が見つからないまま苦しむ人も多くいます。

PTSDの4つの症状

PTSDになった人には、以下のような症状が見られます。

侵入症状

原因となる外傷的出来事が、意図しないタイミングで現れます。悪夢という形をとることもあります。またフラッシュバックという体験した出来事を再体験する人もいます。自分を苦しめる記憶を繰り返し思い出すことで、何度もその時と同じように傷つき苦しむことになります。

回避症状

トラウマとなった物事を思い出させるきっかけとなるものを回避しようと行動するようになります。トラウマのきっかけとなった場所や状況、人物を避ける、また経験したことそのものについて考えたり、思い出したりすることをやめる、そういった話をしないといったこともあります。

心への悪影響

外傷的出来事の内容についての記憶がなくなる、思い出せないといったことが起きます。また感情が麻痺する、今まで楽しめたことが楽しめなくなり、興味や関心がなくなったりします。また外傷的出来事に関して、自分や他人を責めたり罪悪感に苦しんだりすることもあります。

覚醒や反応の変化など

よく眠れなくなる、集中できない、ささいなことに過敏な反応をしたりすることもあります。また感情がコントロールできなくなることもあります。また不安を解消するために極端な行動を繰り返し、アルコールや薬物に依存することで症状から逃れようと行動するといったことも見られます。

PTSDの治療

PTSDの症状が1ヶ月以上続いている場合や、症状によって生活に影響が出ている場合には、診察が必要です。ただし、PTSDは薬の副作用や他の病気が原因で起きている場合、またアルコールや薬物依存によって引き起こされている場合など、いくつもの原因が組み合わさっていることも多くあります。そのためPTSDと診断することが難しいことも多く、治療が遅れると精神的にだけでなく身体的にも衰弱し、取り返しのつかないことになる可能性もあります。PTSDのきっかけとなる出来事が起きた場合には、PTSDになる可能性を考えた上で、適切な診察と治療が必要です。PTSDの治療は、精神療法を中心にストレスや不安をやわらげコントロールするストレス管理法が行われます。あわせて抗うつ剤などの薬物療法も行われますが、PTSDの根本的解決にはなりませんので、うつ症状など症状を悪化させないための治療といえます。